2日め:つづき



「マザー牧場」から「鴨川シーワールド」へ移動する。
相変わらずひどい天気で、風と雨がやりたい放題にあばれている。
途中、漁師町にある磯料理屋へ入った。ここで昼食をとる。
ガイドブックに載っている店らしい。
店主は愛想のいい人で、どうぞどうぞと中に案内した。
ほとんどの人は刺身定食をたのんだ。
岡田は、その他に「焼きさざえ」を頼んだように記憶している。
私自身、魚をあまり食べないので刺身が旨いのかどうか分からなかったが、みんなは「冷凍であまり美味しくない」と言っていた。
私は、違いの分からない男である。
鴨川シーワールドに着いたが、海は荒れまくっていた。
ここは、浦和に勤めていた頃の社員旅行以来なので15年ぶりである。
いちいち、何年ぶりか考えてしまう自分がいやだ。
とりあえず、「シャチのショー」を見に行った。
大きなシャチが宙返りする様子はかなりの迫力である。
童心にかえって、素直に楽しむことが出来た。
たまには、こうゆうのもいいもんだ。

ショーが終わって席を立ったとき、町田が見あたらないことに気がついた。
「迷子」ならぬ「迷おじさん」が発生した。
そこから、みんなで大捜索を開始した。
町田は「迷おじさん」の常習犯である。
考えてみるに、これまで彼が見あたらなくなったときは必ず食べ物屋の行列に並んでいた。
例えば、「ソフトクリーム」や「たこ焼き」等・・・
町田捜索の基本は「ソフトクリーム」を捜す事に始まる。
「ソフトクリーム」はすぐに見つかったが町田は意外にもいなかった。
次は場内放送での「呼び出し作戦」だ。
受付のおねえさんに「静岡からお越しの町田様」を呼んでいただいたが、反応はなかった。
もう一度冷静に、町田の気持ちになって考えてみた。
こんな風に迷子を捜すような事をしているけれど、彼はもしかしたらみんなと「はぐれている」認識が無いんじゃないだろうか?
そう考えた時、「イルカのショー」を無邪気に見入っている彼の姿が脳裏をかすめた。
それから間もなく、山本がイルカのショーの会場から町田を発見した。
彼は、みんなが捜していた様子に気付くこともなく、次のショーを見に席を立とうとしていた。
私は改めて、こんなマイペースな友達がいたことを認識した。
そして、「町田物語」にまた一頁が加わった。
結局、私達は「シャチのショー」を、町田は「イルカのショー」と「ベルーガのショー」を見て園を出た。
町田に「2つも見れてよかったね」と言ったら、「シャチのショーも見たかった」と残念がっていた。
少年の心を持つ無邪気なおじさんであった。

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