エピソード集 |
ホテル浦島は、本当に大きなホテルです。 なにしろお風呂に行くには、あちこち曲がったり昇ったりしながら行かなければならないのですから。 廊下には、一応迷わないように色分けした案内用の線が書いてあります。 茶色の線を辿ってゆけば、忘帰洞にたどり着け、緑の線を辿れば山上館に行けるとか。 これでも、きっと迷う人がいるだろうなぁと思ってました。 でもまさか、身近にそんな人が現れるとは。 それは二日目のことです。 町田さんが合流しました。皆から一日遅れの到着です。 熊野古道を歩き、汗もたくさんかきました。 ホテルに着くなり、「さて今日も温泉めぐりをするか〜」ということになりました。 ホテル内に温泉が5つぐらいあります。 でもやはり、代表的なのは「忘帰洞」ですよね。 「町田、やっぱり入るなら忘帰洞がいいよ!」って誰ともなしに言いました。 「おおそうか、じゃ、そこに行こうかな」って町田さんも答えたのですが、みんなの様子を見るとちょっと変。 「俺たちは、玄武洞に行くからね(忘帰洞は昨日行ったし)」とおいてけぼりをくらいそうな雰囲気です。 それを察知した町田さん。 「いや、おらっちも皆と一緒に行くだよ!」とついてきました。 そして、玄武洞を出る頃、「やっぱり、忘帰洞も入ったほうがいいんじゃない?」ということになり、町田さんと治輝君はみんなと別行動をとることになりました。 そこから二人の冒険が始まります。 他の皆は部屋に帰ってナイターを見たりして部屋でくつろぎました。 夕食の時間が7時15分なのでその頃には帰ってくるように町田さんにも言ってあります。 そうこうしているうちに7時15分になりました。 他の部屋の女性達にも内線して皆が廊下に集まりだした頃。 「そういえば、町田、まだ帰ってこないなぁ?」 「忘帰洞で帰ること忘れたんじゃないの?」 町田さんの奥さんもちょっと呆れ顔になってきました。 しかし、いつまでも待っているわけにも行かないのでドアにメモを貼り付けて食事に行くことにしました。 『先に食事に行っています。3階の菊の間です。』と書いて出ようとしたとき 「わりい、わりい」と町田さんがいつもの笑顔で帰ってきました。 滑り込みセーフのタイミングで帰ってきた町田さん。 本人にそれまでのいきさつを聞いて皆びっくりしました。 私達の部屋は2階のエレベータの近くにあります。 それを勘違いし、5階のエレベーターの前で待っていたようです。 町田さんは、皆まだ温泉から戻ってないんだと思い込み「みんな遅いなぁ」と思っていたようです。 40分ほど経ってから「何か変だっちゃ?」と疑問を感じ始めたようです。 まず、手当たり次第に思いつく部屋番号に内線電話したらしいです。 「もし、違う部屋だったらどうするつもりだったの?」と聞くと 「違うとわかった瞬間にあやまればいいと思っただよ」って。。。それを何室か試したらしい。 これじゃ、埒が明かないと気づいた彼はフロントに電話して「西村さんの部屋は何号室ですか?」と聞いたそうです。 それではじめて自分の勘違いに気づき、ここに戻れたというわけ。 迷子常習犯の町田さん。いつもなら皆が救助に向かい保護するのですが、今回だけは気づきませんでした。 ほうっておくと、こんな大胆な行動をとるんですねぇ。 しかし、手当たり次第の内線攻撃はどうも手馴れた感じですね。 もしかして職場でもやってるんじゃないですか?町田さん! 【目次へ戻る】 |