エピソード集


本気スイッチ

会議翌日、三日目の昼食のお話です。
最終日、酒田の本間美術館を見る頃には12時半になっていました。
二日続けての昼食難に、最終日だけはなんとしてでもという思いが強かったのは言うまでもありません。
でも、それほど深刻な事態になるとは、間際まで誰も考えませんでした。
帰りの電車が「鶴岡16:12発いなほ12号」という現実に気が付いたとき、ここを2時半には出発しないといけないという必然がゆるぎなく立ちはだかりました。
お土産を買わなきゃならないし、NKエージェントもはずせないなぁ…ということよりも、昼食はどうするんだ?という焦りが嵐のように頭の中を渦巻きました。
そこで、なんと本気スイッチが入ったのは折田さんでした。
おもむろに、携帯電話とガイドブックを交互に見ながら昼食の予約を開始したのです。
本間美術館でも、お庭見学もそこそこに「これから9人、いけますか?」という必死の電話攻撃。
その思いに反して、電話先の回答は「え〜、無理無理!」という突き放すようなものばかり。
傍で見ていた僕まで焦ってきました。
「やばいよ、これ」って、折田さんは本気(マジ)で電話攻撃を続けています。
万策尽きて、折田さん、いよいよ本間美術館の警備の人に「このへんで昼食をとれる適当なお店はありますか?」と聞き込みモードに突入です。
で、警備の人から二軒ほどめぼしいお店情報を入手しました。
僕も、お庭なんか見てる場合じゃないんだと気付き、「じゃ、先にお店を押さえに行こうよ」と先行して美術館を出ました。
まず、一軒目は門前払い。
二軒目を見つけ、走って店内に入る折田さん。
そして、店から出てきて、OKマークを僕らに示してくれたとき、何ともいえぬ感動が湧きました。
皆で、昼食をとっているときの安堵感は、山形旅行で一番の思い出かもしれません。
ちなみに、その店は「割烹さわぐち」というところで、メニューは肉あり、海鮮ありで、だーまちのきーはるもけーおつでした。
やはり、僕は肉料理がどうしても食べたくて「ひれかつ定食」を頼みました。
で、お店の人に「これは三元豚ですか?」と尋ねましたが、「国産ですが、違います」というこたえでした。
昨夜の深夜に及ぶ意味の無い会議がばかばかしくも面白くて、さんげんぶーの夢は儚く消えましたが、それ以上に思い出深いものが心に残りました。
次のエピソード
【目次へ戻る】